メルセデス・ベンツは、輸入車ブランドの中でも特に人気が高い代表的な存在です。日本では古くから親しまれており、「ベンツ」という愛称で呼ばれてきましたが、世界的には「メルセデス」という呼び方が一般的と言われています。本稿では、メルセデス・ベンツジャパンに問い合わせた回答を含め、日本で最もポピュラーな輸入車ブランドであるメルセデス・ベンツの呼び方について掘り下げていきます。
輸入車ブランドの人気メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツは、日本でも非常に人気があります。その歴史や品質の高さ、技術力などが評価され、多くの人々に支持されています。日本では一般的に「ベンツ」という愛称で親しまれてきました。特に、1980年代のバブル期には、190Eという車種が大変人気となり、「小ベンツ」という愛称で親しまれました。
メルセデス・ベンツの呼び方に関する疑問
しかし、最近では新たな疑問が生まれています。2018年に導入された3代目Aクラスには、インフォテイメントシステム「MBUX」が搭載されており、音声認識機能が売りとなっています。この音声認識機能を起動するためのキーワードは、「ハイ!メルセデス」というものです。これに違和感を感じる人もいるかもしれません。
このような疑問に対し、メルセデス・ベンツジャパンに問い合わせたところ、「メルセデス・ベンツの略称は、全世界で“メルセデス”を推奨しています」との回答が得られました。つまり、メーカー自身は「メルセデス」という呼び方が一般的であることを推奨しているということです。
メルセデス・ベンツの由来と世界的な呼び方
では、なぜメルセデス・ベンツは「メルセデス」という名前で呼ばれるようになったのでしょうか。その由来は19世紀末まで遡ります。当時、ダイムラー車を総販売していたオーストリア・ハンガリー帝国の領事エミール・イエリネックは、愛娘メルセデスの名前をダイムラー車につけて販売しました。その後、レースでも好成績を収めたことから、この名前が定着していきました。
このように、メルセデス・ベンツは古くから欧米で親しまれた車名です。また、英語やフランス語ではクルマを女性名詞として扱うことが一般的であり、女性名が馴染んだ理由の一つでもあります。さらに、イエリネックは響きの重厚さを避けるために、「ダイムラー」という名前を避けたとも言われています。
吉田茂元首相とメルセデス・ベンツの関係
興味深いエピソードとして、日本の著名な政治家である吉田茂元首相とメルセデス・ベンツとの関わりがあります。吉田茂元首相は、1951年に西ドイツを訪れた際に、アデナウアー首相とドイツ車購入の約束をしました。しかし、長らくその約束を果たすことができない時期が続きました。それから12年後の1963年に、念願のドイツ車であるメルセデス・ベンツ 300SEロングを購入しました。その際、アデナウアー氏に電報を送り、「われ約束を果たせり。新しいベンツに本日から乗っている」と報告しました。このエピソードからも、吉田茂元首相が「ベンツ」という愛称で親しみを持っていたことが伺えます。
日本での愛称「ベンツ」という呼び方の背景
日本では、クルマの愛称を略すことが一般的です。例えば、スカイラインGTを「スカG」、トヨタスポーツ800を「ヨタハチ」など、3~4文字に略すことが多いです。そうした略称の傾向が、「ベンツ」という呼び方にマッチしたのかもしれません。また、輸入車でもフォルクスワーゲンを「ワーゲン」やキャデラックを「キャデ」と呼ぶなど、親しみを込めた愛称が広まっています。
結論
メルセデス・ベンツには、「メルセデス」という世界的な呼び方と、「ベンツ」という日本で親しまれた愛称という二つの呼び方があります。どちらも一定の理由があり、愛着を持って使われています。メーカー自身は「メルセデス」の使用を推奨していますが、「ベンツ」という愛称には日本独自の背景や文化が反映されています。